「少年兵」と「八路軍」。

僕は八路軍の少年兵だった―中国人民解放軍での十年間 (光人社NF文庫)

僕は八路軍の少年兵だった―中国人民解放軍での十年間 (光人社NF文庫)

増補版 13歳の関東軍兵士

増補版 13歳の関東軍兵士

すでに来歴調査の段階で出身地にある程度目星はつけており、なぜそれが「日中貿易」につながるか理解ができていなかったのだが、今週のNDLで発掘した記事を読んで流れを理解した。その理解を更に深めるために速攻で査収を決めたのがこの2冊。両者とも「体験記」であるためにその細部までの信憑性には一定の留保を行う必要があるのだが、戦後に前者のような形で八路軍兵士に転じたのちに帰国した人間が若干存在すること、また日中貿易に携わった人間にはこのような数奇な来歴を持つ人物が見受けられる。つまり「戦後日中史」と「満洲史」とのつながりを無視してはならない。また、当時の関係者がそのあたりをあまり語らない理由というのも、両書を一読して理解した。あまりにも過酷すぎて語れないのだ。

前者の最終章「対中貿易時代」は必読である。
国交樹立前の日中貿易については「なかったこと」扱いとされているために、この手の書籍はだいたい伝聞に頼らざるを得ず、書かれていることもほとんど紋切り型でなおかつソースすら集中しているのだが*1、そういうものとは異なる当事者からの視点は重要である。特に「困るのはむしろ中国のほうであったはず」(P.241)という思い入れのない記述は、わたしの対中貿易観*2と通じるものがある。

あと後者にはなぜか著者住所の鉛筆での書き込みが*3 なにこれ(゚Д゚)

*1:「覚醒中国」西原哲也、社会評論社2012を例に取ると、P.88にあるクラレビニロンプラントの中国輸出の件は「今だから語れる私の対日貿易」林連徳の引き写しである。

*2:あくまでも「国交樹立前」に関する部分のみだが。

*3:密林の「マーケットプレイス」で調達