「錦州パルプ」財務諸表を読む。

満洲国政府公報』も『官報』と同じようなものだから「決算公告」を探すことはできないかと試みた結果、公文書館所蔵の同文書より錦州パルプの決算公告(第1期〜第6期、第10期)を探しだすことができた。戦前の商法計算書類は「登記資本金」と「未払込資本金」を両建で書いているのでわかりづらいが、だいたい概要はつかめた。特に同社の資本金払込額は登記額の25%にもかかわらず、王子製紙の資金援助があって成り立ったのだということがわかる。「王子製紙株式会社勘定」があまりにも巨額すぎて、立ち上げまでの間その金額が急激に膨らんでいる。当然ながら営業キャッシュフローなどあってなきが如しで、財務キャッシュフローだけで成り立っているという代物。それでも工場操業開始から一気に利益を計上し、第6期(6ヶ月決算)で累損を一掃しているのだから大したものである。問題は、1944年からの生産高減少と敗戦時の決算処理がどうなったかで、さすがに清算貸借対照表などあろうとも思えないからそこはよくわからない。