四日目(古蓮→加格達奇)

やがて列車は漠河県に着く。終点古蓮の一つ前、「北極村」の玄関口でもあり、乗客のほとんどはここまでで下車してしまう。あとは17kmの距離を延々と乗り続けることとなる。この一区間の景色は白眉といっていい。もっとも、北緯52度を越すともはや植生の限界を超しているようで、針葉樹か白樺の類しか植物は見られない。当然、牧畜なんぞできる環境ではない。


終点の古蓮は、近年露天鉱が開設されたとはいえ、駅周辺は見事なまでに何もない。道路は舗装すらされていないし(そもそもバスすらろくに来ない)食堂はおろか旅社の類すら見ない。最初はここで昼食でも取るかと考えたが、それが甘い考えであったかがよくわかる。
小区内で煙草を吸っていたら、またも住民に「禁煙だ」と指摘される。そうかこのあたりは林業が主産業だから、火事につながる喫煙には神経質となるわけか。北限の風景を納めようと思ったが、近くで教練か何かやっていたようだったので、とっとと退散して站に戻る。


帰りの6246次臥舗を調達して、站で写真を撮っていると少し晴れ上がってきた。さあこれから加格達奇まで戻るぞと列車に乗り込んだら、漠河県で大雨になってきた。いくら山間部とはいえ、ここまで天気が変わるとは。行きと逆の道を辿って、ひたすら南下していく。


この地域は林業が盛んな地域で、站からは引込線が伸び、木材積込用のクレーンが目立つ。することもないので、景色を眺めながら、写真を撮ったり、煙草を吸ったり、雑談したり、ビールを飲んで酒肴を取ったりの繰り返し。列車職員もこんなのがいるとはかなり奇異に映るであろう。(それでもビールと酒肴は買うから、上得意には違いないが)


夕方に塔河でDF7Dらしき赤いDLの廃車体がゴロゴロ転がっているのを発見した。この地域で使用されていたとは聞いていたが、いつの間にかDF4に淘汰されてしまい、この地で死に果てたようだ。言うまでもないが、そんな状況の地で蒸機が残っているはずもない。


21時45分に加格達奇到着。早速、翌日のK7093次の海拉爾までの切符を購入。軟臥なら買えるかもしれないと思ったら、見事に買えた。あとは飯食って駅近くの賓館に投宿。一泊250元以上取るのでどれだけの部屋かと思ったら、確かに広かった。その代わり妙に饐えた臭いがしたのが気にはなった。