男性作家の書く女性

渡辺淳一の「失楽園」「愛の流刑地」へのツッコミどころをあげたらキリはないが、三島由紀夫「音楽」もかなり女性の描き方は読んでいてつらいものがある。むしろ、大正時代を描いた作品であるにもかかわらず幸田文「きもの」の三姉妹の造形が今尚時代性を失わないのはなぜか。逆に同作品の結びである結婚後の初夜の場面が唐突な印象を受けるのだが、それでも「愛の流刑地」における女性描写に比べれば雲泥の差である。
前にどこかで書いたが、女性の本質は関係性にあり、作者自身の思いを暴走させるとおかしなことになるわけで、それが自分に幸田文作品を読ませるきっかけとなった。
男性が女性を作品に登場させる場合、過度な思い入れ(劣情ともいう)は避けねばならない。それが渡辺淳一作品に対する違和感にもつながっていたのだ。連載当時の裁判画面を読んでなにこのグダグダさに閉口したのを思い出した