だから中国は法治国家ではないのだ。

「司法制度の早期改善を」三井物産中国室長 前田真彦さん
Q.不良債権が膨らんだ理由は。
A.一言で言えば、国有企業独特のずさんな経営が根底にあった。例えば、国有企業が大型機械設備の利用を前提とした事業・資金計画を地元の行政機関に提出、許認可を受けていても、この計画をうのみにはできない。国有企業がそもそも、許認可を受けられるように事業計画をかなり甘く策定しているケースが少なくなかったためだ。地域的にみれば、北京や黒竜江省など北方では契約を履行しようという意識は強いが、中央政府の意向が届きにくい広東省など南方はずさんだ。われわれの反省点としては、国有企業の実態を理解しないまま、「国有」という冠だけで信用していたことが挙げられる。このため、現在は「地方案件」には極力注意するようにしている。
Q.回収をめぐり、他に問題点はあるか。
A.ビジネスを行う上での最終的なよりどころは法律だが、中国では司法制度の不備が目立つ。日中両国の六法全書を並べれば同じぐらいの厚さがあり、法律はそろってはいる。ただ、運用面が不透明で理解に苦しむことが多い。例えば、不良債権の回収をめぐり、国有企業が存在する地方で訴訟すると、非常にこちらの分が悪い。国有企業が地方の経済・社会に重要な役割を果たすことを地方裁判所が重視しているためと思われるが、法律的にはわたしたちが正しくても、国有企業をかばうような判決が出ることが多い。勝訴して強制執行に踏み切る場合は、リースした機械設備は既に劣化して売り物にならないため、国有企業が保有する他の設備を差し押さえようとするのだが、どこからか横やりが入り、この手続きが進まないことまである。
Q.司法は「独立」していないのか。
A.信じられないことだが、中国の地方裁判所の裁判官は、法律の専門家ではない共産党員や退役軍人なども務めている。裁判官資格として司法試験合格が義務付けられたのが2001年だったことからも、いかに遅れているかが分かると思う。これから改善されるようだが、わたしたちが80年代に抱え込んだ不良債権の回収を図ろうと裁判所に訴えても、なかなか困難な情勢だ。さらに、実態として三権分立がない中国では、司法に行政が介入してくることも覚悟する必要がある。民間企業だけで事態打開を図ろうとしても限界は見えており、司法制度の運用改善は国際機関などで早急に議論していただくしかない。(聞き手=産業部・四谷浩章、12/26時事)

ある意味終わっているとしかいいようがないわけで、益々これが国内所得格差に拍車をかけているのだが。