極論すれば「手法」はほぼ同一に収斂する。

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映画はやくざなり

映画はやくざなり

2004年頃に買ってそのままどこかにやってしまった(寮を出るときに置いてきたはず)。当時は「シナリオ骨法十箇条」に從って何か書けるのかなと思っていたが、自分にはそういう才覚は存在しない。写真も撮ってきたが、それは「ある程度きれいにまとまった」ものであって、おそらく自分の内面に根ざしたものではなかった。
自分の写真に「目を引く」ものがないことは2009年頃に自覚させられたが、「中国の鉄道なら蒸機でも窄軌でも客車でも貨車でも何でもできる幅の広さ」があるということは言われた。ただしその時はそれをどう文章にできるかどうかというところは未知数で、往生しながらまとめてはみたもののやはり慣れていないことだから無様な出来であった。
2010年にふと「富士車輌製罐車」「大連甘井子站の電機」「北朝鮮の100トン貨車」について調べてみたくなり、国会図書館に通って資料収集をはじめたのが「論叢」そもそものきっかけで、細々とサイトに研究過程をアップはしてみたものの、問題はどうやって「形にする」かであった。もはやこのような商業的に成立しないようなマイナーな題材を掲載するほど鉄道雑誌に余裕はない。
幸い、2010年暮れにコミックマーケット(C79)に一般参加してみて、そのときに「これだけの動員数があれば全体としては微々たるものでも捌けるのではないか」と考えたのが、「一人同人」の成立であった。

(1)コンセプトの検討
(2)テーマの設定
(3)ハンティング(取材と資料蒐集)
(4)キャラクターの創造
(5)ストラクチャー(人物関係表)
(6)コンストラクション(事件の配列)
(7)プロット作り

まず、本書のコンセプトとテーマとしては「鉄道を軸として日中関係を読み解く」ことで、貨車だけではなく付随する事象を取り上げることとした。「I」では中国向輸出車両・大連甘井子埠頭・100トン貨車であり、「II」では国交樹立前の日中貿易・大陸の秘境駅紹興漓鉄であり、「III」では満州の港湾・上海地域蒸機・華中鉄道蘇嘉線であった。「人物」に関連する部分は「満洲の港湾」以外敢えて掘り下げてはいないが、資料収集に伴う事実関係の整理を行なった上でプロット作りに入り、錯簡誤脱がないか何度も読み直しを行い、また書いていく中でテーマを明確にし、それを全体的に読み取ってもらうように務めた。

その上で、従来の鉄道書籍に見られがちであった「写真」を表紙に大々的に取り込むことをやめて、むしろ「白書」*1風な硬派なイメージを狙った。*2 レイアウトはこなれていないし、紙質も薄いしクリアコート仕上げにしたからかえって安っぽいイメージになってしまったが、内容で勝負する覚悟で書いた。
あと「シナリオ骨法十箇条」はおそらく応用しづらいので、テーマがずれないかどうかそこだけであろう。「創作」ではないので。どうにか3回続けてきたが、これ以上はマンネリになりかねないので*3、そこからの打破を図る意味で「入門」を書こうとしているのは前に書いたとおり。一旦ここで打ち切り。

*1:一般的な政府白書ではなく、コクトーが秘密出版した「白書」が頭にあった。「唐沢俊一検証本 I」の影響を受けているが、「論叢」は「II」以後も白地の基調を敢えて崩していない。

*2:「日本製機関車製造銘板番号集成」渡辺肇著と図らずも同様の体裁となっていた。書泉グランデで販売。

*3:チラシで「ОСОРОССИЯ貨車論叢やるべか」と書いた真意はここにある。