「昭和改製原戸籍」と「戸主」制度。

http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2012/02/post-da7c.html
戦前民法下の「戸主」制度というのはどういうものだろうか、ふと自分の係累から遡及して出自を辿ってみたくなり、三代前まで戸籍を取り寄せる作業をしたことがある。2008年法改正で戸籍謄本が非常に取り寄せづらくなり、三代前の戸籍を取り寄せるために牽連戸籍の写をすべて添付して送るという非常に無駄な作業が増えるのだが、特にその中でも昭和改製原戸籍が圧巻だった。
というのも、同じ人間の戸籍が記載されているにもかかわらず、戸主が異なれば戸籍は違うわけで、前戸主〜隠居して戸主交代〜戸主死亡で長男が戸主となるという非常に複雑な事例が存在しており、これとばかりは実際に現物を見てみないとわかりようもなかった。戦後法改正で「戸主」制度は消滅し、その時に未成年だった「戸主」は戸籍改製時に母親が筆頭者扱いになっている。なるほど「戸主」とはこういうものだったのかと納得した次第である。
でもって、天漢日乗氏が指摘されている件だが、旧民法下では「戸籍」=「家」なので、兄弟係累もすべて同じ戸籍の中に含まれている。*1悪い言い方をすれば弟以下はすべて「部屋住み」という扱いにされてしまっているわけだが、それが戦後法改正で「戸籍筆頭者」と「家庭」単位に分割された結果、それぞれの家庭が「家」意識を引きずっていったのが戦後ではないのかという興味深い話である。2ch「家庭板」では嫁姑問題のスレで「2〜3代遡ったら普通の家柄でしょう」という話はよく出てくるのだが、なんとも不思議な感覚である。

ペルソナ―三島由紀夫伝 (文春文庫)

ペルソナ―三島由紀夫伝 (文春文庫)

三島由紀夫氏のご尊父もそういう感覚だったのかもしれん。

*1:中国の戸籍は今なおこのスタイル。「戸口簿」という。