「公共交通」は果たして無駄か。

http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/osaka/091009/osk0910090216000-n1.htm
堺市だけでなく、三木市のように公共交通への補助廃止を主張した市長の当選で路線があぼーんになるケースは多々ある。そもそも、LRTというのは、海外では郊外型路線が大半だから、日本のように「路面電車」という市内交通の枠内で収めること自体に無理があるから、それは当然の帰結かもしれない。三木市のように、人口の流れと逆の方向にある路線を廃止することそれ自体も、なんら非難されるべきものではない。ただし、安易に「補助する金が勿体無いから」公共交通を廃止するというのには、小生は異論を唱える。
1980年代にバス路線の補助制度が縮小されたことに伴い、群馬県では東武鉄道を筆頭に大手バス会社が競って路線撤退を行った結果、館林市が「バスすら走っていない市」第一号という栄誉に輝いた。さすがに汚名返上を図るために「市営バス」*1を運行する羽目になったし、1990年代にはもっと悲惨な状況に陥った結果、上毛電鉄のタクシー部門を出自とする会社*2がいつのまにか「群馬県最大手のバス会社」に成り果てた事例がある。まあ、群馬県の場合は、どの会社もボロバスしか走らせてなかったから、住民としては歓迎なんだろうが、自治体の負担はどっちが少なくて済んだのかね?
さらに書く。バス路線の場合、自治体が運行できる能力がないからこのような形で「焼け太り」が生じる余地があるわけだが、鉄道路線の場合、下手に廃止すると地元のモータリゼーションが更に進んで、沿線の町の繋がりそれすらも崩壊するという事例が多々あるわけだが。最近、県・自治体が補助あるいは上下分離を検討するのは、そういった文脈とも考えられる。*3とはいえ、これらの路線が通常ベースで生き残れるとも思えないわけで、そこは県・自治体の公共交通に対する考え方が問われてくる。「公共の福祉」か「捨て銭」か。*4
相変わらずオチはない。

*1:タクシー会社への運行委託。一日数往復程度だが、一応バス路線。

*2:日本中央バス。地場の運送会社が上電ハイヤーを買収。上信電鉄、群馬バスなどが路線廃止するのに乗じて、赤字を地元自治体が補填する条件で積極的に路線拡大を図った。日航機事故で有名な上野村までのバス路線も運行。実際は、群馬県を起点とし深夜などの微妙な時間に発着する高速バスが主力。

*3:「北勢」「揖斐」「伊賀」は、それに加え、赤字路線の切り離しをして少しでも「ドレッシング」をしたい近鉄側の事情もあった。

*4:北陸圏は冬季の季節的な事情、ならびに過疎化などの問題と絡めて、そのあたりは真剣に考えている。逆に都市部に比較的近いところでは岐阜市のように徹底して冷淡なところもある。財務屋の視点から書くと、損益面ではこれらの地方路線が単独では生き残ることは不可能。