「クトゥルフ神話」+「満洲」(2)

昨日に引き続いてのネタ出し。

「復州湾を覆う影」というよりは、むしろ「関東州を覆う影」とすべきか。大連市内の交通機関(市電)などもっと細部を作り込むのもいい。西欧人が忌み嫌う「海鮮」を食文化として描ける特質を活かして、たとえば主人公が彼女の実家で「海腸」を振る舞われた瞬間の反応などを掘り下げて書いてもいい(自分が家人実家をはじめて訪問したときの不安感を思い出せ)。食卓において「異文化」と接したときのある種の拒絶反応、カルチャーギャップ。また、同地域の交通の不便さと一人で同地を回ったときの心細さなど。

時代背景は康徳2年の「松竹歌劇団満洲公演」前後とし、少女歌劇の話題をさりげなく盛り込むことで、台詞に説得力を持たせる。狂言回しは原作(ザドック老人)と異なるが、これは「インスマスを覆う影」ドラマ版でも同じようなものなので問題はない。ただし、当時の言葉遣いまではよくわからないし「インスマス」に名を借りた私小説的な装い。

「復州湾の塩田」(とその窄軌)はこっそりと草稿をまとめているのだが、これこそ一種の取材ノートでありまた「筆者解題」でもある。本構想はその応用篇。徹底した資料調査によるリアリズムがこうした小品に厚みを加える。幸い、こうした「クトゥルフ」ものには国内外様々な実績があるので、これと「満州」を組み合わせることによる「作風転換」ならびに気分転換。インスマスを覆う影はかなりの短編だが、さらに絞りこむ(「ダゴン」あるいは「ナイアラトテップ」以上)。こうしたものを盛り込むには無理があるはずなのが、とりあえずやってみる。それにしても、昨今の業務混迷とそれへの怒りが自らの中に眠っていたものを掘り起こすことになるとは。

「僕の彼女には鱗がある」『凡々ブログ』2012.01.08
http://d.hatena.ne.jp/Nephren-Ka/20120108