「無断復刻」今はできませんが。

薔薇族」を作って潰したお方の過去のエントリにこういうのがあった。
http://bungaku.cocolog-nifty.com/barazoku/2005/11/post_2a20.html
そもそも三島由紀夫の「切腹フェチ」は「憂国」を映画化したことで知られているが、まさか変名でこんなものを書いていたとは思わなかった。

『愛の処刑』はそれよりも早く、『薔薇族』No.11の5月号に作品だけは全文公開している。これは昭和48年のことだから、三島が自決して3年後のことだ。前号に『愛の処刑』を載せるという予告をしたら、間違いなく三島のお父さんだと思うが、平岡と名乗って載せないでほしいという電話があった。
ぼくは『愛の処刑』が乗った『アドニス』の別冊の小雑誌『Aporo』に、三島さんから頼まれてイラスト4枚を書いた三島剛さんから直接聞いているので、文体と名前を神山保と変えていても、三島作だということは間違いないと信じていた。

三島さんが同性愛者であることをあんなに隠し切った奥さんは、冥土でどう思っているのだろうか。

ええそりゃ瑤子夫人はイヤでイヤでイヤでイヤで仕方がなかったと思いますよ。でなければ「切腹フェチ映画」の「憂国」オリジナル版廃棄指示なんて出すはずがない(2003年時点、町山智浩氏が「映画秘宝」でこの映画について言及していた。当時は「オリジナル版が廃棄された」という定説が通っていたが、ほどなく原盤が出てきた)。
ただし、ここで気になるのが、三島由紀夫の父、平岡梓が出てきた点である。確かに三島由紀夫の作品であることを立証できれば、作品掲載を差し止めることは可能であった。ところが、名義が変名だから、無断復刻を強行しても何の咎もなかったわけである。今は法改正により「供託」が義務付けられているのでこういうことは簡単にできないが、1960年に発表された作品なので発表後50年を経過し、著作権は消滅している(はず)。*1

*1:通常は著作者の死後50年は著作権は保護されるが、匿名・変名で発表された作品は単に50年なので、他の三島作品よりもこちらのほうが著作権保護期間が短いという現象が発生してしまう。