「埋蔵金」とは一体何か。

http://d.hatena.ne.jp/SY1698/20110220/ の続き。
ぐらもんさんからのコメントで「埋蔵金」=「簿外債務」という読み方をされていたので、ふと自分なりに整理してみた。そもそも、この概念は塩川正十郎氏が「母屋でおかゆをすすっているときに、離れですき焼きを食べている」というところから広く知られるようになったのだが、基本的な概念としては「単体は赤字、連結では黒字」というイメージである。そういう会社がある場合に、どうやって親会社に配当金を吸い上げるか、という会計技法の話であって、簿外債務云々という問題ではない。
もし、国家財政(一般会計のみならず特別会計も含む)に簿外債務が生じている場合、そもそもそれだけの巨額な債務を誰が作ってどうやって運用したかが問題となる。数百兆円の金を市場で動かせば、途方も無い影響が及ぶ。日銀砲で欧米ファンドを潰したとかそういうレベルの問題ではない。
とはいえ、すでに高橋洋一氏が年金財政は大きな穴が開いていることを著書で指摘している。近年の年金資産運用失敗に寄る損失がどこに行っているかという問題が考えられるが(低金利下で無理に株式運用をしたことによる含み損とか)、それとて現在の年金が賦課方式となっており、年金支給時期を先送りする*1などの手を使えば一気にひっくり返る話である。そもそも企業年金と違って労働債務ですらないし。
それ以前の問題として、国の財務諸表にはこのような注記がある。

国が保有する資産には、公共用財産のように、行政サービスを提供する目的で保有しており、売却して現金化することを基本的に予定していない資産が相当程度含まれている。このため、資産・負債差額が必ずしも将来の国民負担となる額を示すものではない点に留意する必要がある。

財務諸表の常識からいって、キャッシュフローが巨額のプラスを生んでいながら、貸借対照表債務超過というのは考えられない。キャッシュフロー計算書は損益計算書から逆算するのだが、その中で非資金性費用(引当金繰入・減価償却費)は実際の現金支出を伴わないので差し引くから、損失がありながらキャッシュフローがプラスになるというのは、意図的に資産評価を落とす仕訳を入れていなければ起こりえない。*2さらに、一般会計ではキャッシュフローがマイナス、なのに特会込みでプラスというのは、一般会計から特別会計に利益を流さなければ実現できるものではない。*3
(付記)
本件については、国の財務諸表(2008年度、2009年度)をベースに分かりうる情報のみで記載しておりますが、疑問質問異論反論等ございましたらなんなりとコメントください。小生も議論を深めていきたいと思っておりますので。

*1:年金支給開始年齢を65歳から70歳に繰り越すだけで、繰上支給による割引効果は巨額となる。

*2:一例として、2008年度ではJT株式と日本政策金融公庫の評価損で2兆円の特損を出している。

*3:逆の例なら、一般的な「粉飾決算」として多々見られる。個別のケースはここでは論じない。