「世界の工場」からの撤退加速。

中国本土の加工貿易締め付け政策により、東莞から撤退する台湾系企業が出始めている模様だ。一部の家具メーカーなどでは既にベトナムへ生産拠点を移転する動きも出ているという。28 日付香港紙文匯報が報じた。「今年だけで生産コストは既に10%も上がっている。このままいけば、1〜2年で東莞の台湾系企業の3分の1が閉鎖に追い込まれる」と警告するのは、東莞台商協会の謝慶源常務副会長。電力不足、人材不足、労働コストの上昇に加え、加工貿易締め付け政策のあおりを受け、家具メーカーではリスク軽減のため減産するところも多く、既に生産コストの低いベトナムなどへ生産拠点を移転するメーカーも出始めた。台湾系企業の多くが工場を借りていることから、工場閉鎖や生産拠点の移転が続けば、同地には空き工場だけが残されることになる。謝副会長は「そうなると千万人単位の失業者が出る。大きな社会問題となるだろう」との懸念を述べた。一方で、中国本土市場を狙ってこのまま東莞にとどまるメーカーも出てくるとの見方もある。(8/29NNA)

解説しておく。
中国における増値税の還付要件。これは「輸出売上」となることだが、香港・澳門に輸出したって「輸出売上」となる。一国二制度だからだ。当然、香港・澳門から中国に輸入された貨物も「輸入貨物」扱いになり、増値税の課税対象から外れる。これは「物流園区」を通しても同じ効果が得られる。こうした物流・商流の回転率を上げることで、中国は「世界の工場」となったことは注目されるべきであろう。
しかし、ここまで巨額の貿易黒字を出しておいて、世界を相手に貿易摩擦を引き起こしている状況下では、貿易黒字削減策を取らねばならぬ。そういうことで、増値税還付率の引下げなどの政策を急に取っているわけだが、当然そうなると足の速い、台湾・香港系企業は早速華南から足を洗いにかかっているのが現状である。この政策が今後も続くようだと、その世界経済に与える影響は決して少なくはない。
すでに中国沿海部は、製造業にとって、税制面その他も含めて、もはやメリットはなくなりつつあり、内陸部に移転するくらいなら、越南あるいは泰国へ移転するであろう。
また、中国本土市場を狙うにしても、本土系企業の低付加価値・低価格品との価格競争を繰り広げていたら、いつか死ぬ。
間違いなく、2008年五輪の年が、中国経済曲がり角の年だ。