「水間鉄道」の抱えていた不発弾。


[官報 1974.05.20 第14214号 P.31]
グルメ杵屋の傘下に成り果てた水間鉄道の破綻の原因はバブル崩壊が定説だが*1、実はそれ以前から「不発弾」を長期にわたって抱えていたのが、わたしの見立て。
1974.03.31(第92期)の財務諸表を例に取ると、固定資産の総資産に占める割合が20%弱しかなくて、ほとんどが流動資産(科目は開示していないが「販売用不動産」と見るのが正しい)。さらにこの時点で負債額は総資産の90%を越えており、いくら黒字とはいえ自己資本額たるや微々たるもので、固定負債/資産比率は約5.0倍と常軌を逸した数値である。固定負債が固定資産の額を上回る借入というのは常識的にありえない。「流動資産が担保力を有する」「ただしその回収期間が長期化している」からこそ、返済条件の繰延などの措置を受けていなければこういう数値は出てこない。
たしかに、1980年代後半に流動資産額が急増し、1990年代半ばにそれを大幅に処分して債務超過に転落した後に倒産に至ったのだが、そもそもの遠因として「紀泉鉄道」の合併と、それに伴う免許維持のための土地保有が重荷になっていたことを誰も指摘していないように思えたので書いてみた。
http://www.suitetsu.com/ir/koukoku/index.html
会社更生手続終結後の財務諸表はこちらから。債務超過の状態ではあるものの重荷となっていた販売用不動産を完全に切り離し、2011.03.31に固定資産の減損処理を実施しさらに身軽にはなっている。親会社がどのような決算対策を取っているかここで判断することは困難ではあるが。